千歳船橋あむ動物病院・村田結皆院長 インタビュー

ペット健康診断メディア PetPort

東京都世田谷区

その子の症状に、いちばん合う獣医師を。“科目別チーム診療”という安心

千歳船橋あむ動物病院

村田 結皆 院長

「基準値から外れた項目があります」——健康診断の結果票を前に、不安になった経験はないでしょうか。小田急線・千歳船橋駅から徒歩3分の千歳船橋あむ動物病院では、循環器、消化器、腫瘍科、皮膚科、歯科など、得意領域の異なる獣医師たちが院内で相談しながら診療方針を整理する「科目別チーム診療」に取り組んでいます。「健診で見つかった異常値は、治療を始めるためのスイッチではなく、その子の体で何が起きているのかを考えるためのサインです」と語る院長の村田結皆先生に、その想いを伺いました。

専門・得意分野

循環器内科、一般診療(科目別チーム診療)

略歴

日本大学卒業後、同大学付属動物病院全科研修医、夜間救急動物病院さいたま大宮SONAC非常勤、千歳船橋あむ動物病院勤務医として研鑽を積む。2022年に獣医腫瘍科認定医Ⅱ種試験合格。学会発表や論文執筆の実績は、researchmap(村田結皆)に公開されている。現在は院長として、獣医師それぞれの専門性を活かせる環境づくりと、病院全体の医療の質を高めるための体制整備に力を注いでいる。


得意領域の異なる獣医師が、チームでその子を支えます

目次

「動物のことで頼られる」嬉しさが原点。父から受け継いだ地域の医療

─ まず、獣医師を志されたきっかけを教えてください。

「父が動物病院をしていたので、獣医療は子どもの頃から身近な存在でした。学校の先生や友人から動物のことを相談されることもあり、当時は分からないなりに自分で調べたり、父に確認したりしながら答えていました。その中で、動物のことで頼られることが嬉しかったですし、同時に、正しく理解して相手に分かる形で伝えることの大切さも感じるようになりました」

その原点は、今の診療スタイルにもつながっています。

「今の診療でも、検査結果や病名をそのまま伝えるだけでは不十分だと思っています。その結果がその子にとってどういう意味を持つのか、飼い主さんがどう判断すればよいのかを整理して伝えることが大切です。そうした姿勢の原点は、子どもの頃に動物の相談を受けていた経験にもあるのかもしれません」

─ お父様から病院を引き継がれた際は、どのような想いだったのでしょうか。

「私にとって千歳船橋あむ動物病院を継ぐというのは、単に家業を引き継ぐというだけでなく、地域の動物医療の責任を引き受けるということでもありました。父は長くこの地域で診療を続け、医療面でも信頼して通ってくださる飼い主さんが多くいらっしゃいました。私自身も、父の診療から、動物と飼い主さんに誠実に向き合う姿勢を学びました」

「その信頼を大切にしながら、今の時代に合った、より組織的で再現性のある診療体制へ発展させていくことが、私の役割だと考えています。検査や治療の選択肢が増えた今だからこそ、検査結果の解釈や診療方針の整理まで含めて、根拠をもって相談できる病院にしていきたいです」

その子の症状に合った獣医師が診る。「科目別チーム診療」という体制

─ 「科目別チーム診療」に取り組まれていますが、どのような経緯でこの体制を作られたのでしょうか。

「原点は、子ども時代の経験にもあります。中学生の頃、職場体験で学校近くの動物病院を見学した際に、内科、外科、歯科のように、獣医師ごとに得意分野を分担して診療している姿を見ました。そこで、優れた獣医師個人の力だけでなく、病院全体として診療力を発揮できる組織を作ることの重要性を感じました。高校生の頃に世田谷で夜間救急病院が設立されたことも印象に残っています。これからの動物医療は、一つの病院がすべてを抱えるのではなく、一次診療、夜間救急、専門診療というように、役割分担が進んでいくのだと感じました」

その確信は、大学病院や夜間救急病院での経験を通じて深まっていきました。

「大学病院では、科目ごとに専門分化された診療が当たり前に行われていました。一つの病気や検査結果を考えるにも、循環器、消化器、腫瘍科、画像診断など、それぞれの分野の深い知識が関わってくることを実感しました。夜間救急では、急性期の状態を安定させたうえで、翌日以降の継続診療をホームドクターにつないでいく場面が多くあります。一つの病院がすべてを抱えるのではなく、それぞれが役割を分担しながら、一頭の動物とご家族を支えることが大切だと感じるようになりました」

こうした経験が、現在の「科目別チーム診療」につながっています。

「現代の獣医療では、一人の獣医師がすべての分野を同じ深さで判断することは、現実的にはかなり難しいと思います。だからこそ当院では、循環器、消化器、腫瘍科、皮膚科、歯科など、それぞれの獣医師が得意領域を持ち、院内で相談しながら診療方針を整理する体制を作っています」

─ 地域の中で、貴院が担いたい役割についても教えてください。

「当然ですが、当院がすべての分野を同じ深さで診られるわけではありません。整形外科や眼科、行動診療科、産科など、当院が専門としていない領域では、外部の先生方に相談したり、専門施設につなぐことが大切だと考えています」

地域連携は、上下関係ではなく「得意な役割の持ち寄り」だと村田先生は語ります。

「地域の中で必要とされる役割は、専門医療だけではありません。爪切りやワクチンなどの日常ケアを、動物にとってできるだけストレスの少ない形で行うことも大切な技術です。通院治療を無理のない形で続けられる体制がある病院、予約がなくても診てもらいやすい病院、往診に対応できる病院など、それぞれの病院に地域の中で果たせる役割があります。日常的に動物の状態を見守るトリミングサロンや、飼い主さんが安心して預けられるペットホテルも、地域で動物とご家族を支える大切な存在です。だからこそ、院内のチーム診療だけでなく、それぞれが得意な役割を持ち寄りながら、地域全体で動物とご家族を支えることが必要だと思っています」

異常値は「治療のスイッチ」ではなく、考えるための「サイン」

─ 健康診断で異常値が出た際、飼い主さんはどのような反応をされることが多いですか。

「健康診断を受ける飼い主さんは、必ずしも何か病気を強く疑っているわけではなく、『今の状態を確認したい』『安心したい』『後悔したくない』という気持ちで受けられることが多いと思います。そのため、検査結果で基準値から外れた項目があると、『病気なんでしょうか』『すぐに治療が必要なんでしょうか』と不安になられる方は多いです。インターネットで調べて、さらに心配になって来院される方もいます」

しかし、異常値=病気ではないと村田先生はいいます。

「健診で見つかった異常値は、病名そのものではありません。すぐに病気と決めつける必要はありませんが、軽い異常だから必ず安心とも言い切れません。大切なのは、その数値がその子にとってどの程度意味のある変化なのかを、症状や年齢、過去の検査結果、ほかの検査所見と合わせて整理することです。それを適切に行うには、検査項目ごとの特徴や各診療分野の知識が必要になります。だからこそ、専門分化された視点と、必要に応じて相談できる連携体制が大切だと考えています」

─ 「検査値の高低だけで判断しない」という考え方を、飼い主さんに伝える際に工夫されていることはありますか。

「飼い主さんには、『検査は答えそのものではなく、病気の可能性を考えるための材料です』と説明することがあります。人のコロナウイルス検査でも、検査キットが広く使われ始めた頃に『偽陽性』や『偽陰性』という言葉を耳にした方は多いと思います。陽性と出ても実際には感染していないことがあり、陰性と出ても感染を完全には否定できないことがある、という考え方です」

「動物の検査でも同じように、検査結果の重みは検査ごとに異なります。陽性なら診断にかなり近づく検査もあれば、陽性でも追加確認のきっかけとして読むべき検査もあります。陰性についても、病気をかなり否定できる場合もあれば、条件によってはまだ疑いが残る場合もあります。大切なのは、その検査が何を測っているのか、どのような場面で信頼しやすく、どのような場面で誤解が起こりやすいのかを理解することです。そこを押さえずに結果だけを見ると、検査結果に振り回されてしまいます」

─ 同じ「陽性」「陰性」でも、検査によって意味が違うのですね。

「専門用語では感度・特異度、陽性的中率といった言い方をしますが、飼い主さんにお伝えする時には、『その検査は、何をどのくらい疑える検査なのか』『陰性だった時にどのくらい安心してよい検査なのか』という話に置き換えています」

「たとえば、甲状腺ホルモン数値が低いからといって、すぐに甲状腺機能低下症と診断できるわけではありません。ほかの病気や薬の影響で低く見えることもありますし、検査試薬の特性によって、実際の体の状態とは違う結果が出ることもあります。心臓バイオマーカーも、心臓を詳しく確認するきっかけにはなりますが、それだけで心臓病の診断や治療開始が決まるわけではありません。こうした検査の読み方には、それぞれの分野の知識が関わってきます。だからこそ、一人の獣医師がすべてを抱え込むのではなく、必要に応じて各分野の知識を持つ獣医師と相談しながら方針を整理することが重要だと考えています」

「数値を正常に戻す」がゴールではない。チームで方針を整理した症例

─ 「経過観察」と「追加検査・治療介入」は、どのように整理されるのでしょうか。

「経過観察にするのか、追加検査をするのか、治療を始めるのかは、かなりケースバイケースです。検査値の高さだけで単純に決められるものではありません。同じ異常値でも、その子の年齢、症状、過去の経過、基礎疾患によって判断は変わりますし、ご家族がどこまで検査や治療を望まれるかによっても、現実的な方針は変わってきます」

「この部分は、獣医師ごとに判断が分かれやすいところでもあります。早めに追加検査を勧めるべきなのか、一定期間経過を見てよいのか、治療を始めるべきなのかは、その検査項目や病気に対する深い理解がないと、過剰にも不足にもなりやすいと思います。だからこそ、検査値だけを見て決めるのではなく、その子にとって医学的に必要なことと、ご家族にとって現実的に選べることをすり合わせながら考えていく必要があります」

─ 健診後の異常値をきっかけに、解釈や方針の整理が大切だったと感じた症例があれば教えてください。

「たとえば、猫ちゃんの心臓バイオマーカーのケースがあります。その子は、健康診断の血液検査で心臓に関連するバイオマーカーが高いと言われ、その後も定期的に数値を確認しながら、心臓の薬を長期間飲んでいました。引っ越しをきっかけに当院へ来院された時も、目的は心臓バイオマーカーの再検査でした」

「心臓バイオマーカーは、人の医療でも心不全などの評価に使われる重要な検査で、動物医療でも心臓を詳しく確認するきっかけとして有用です。ただし、特に猫の健康診断で見つかった高値については、その数値だけで心臓病と診断したり、長期的な投薬を決めたりするものではありません。その子の場合、心臓超音波検査で詳しく確認したところ、明らかな心臓病は認められませんでした。そのため、ご家族と相談したうえで薬を一度休薬し、以後は症状の有無と心臓超音波検査で経過を確認していく方針にしました」

もう一つ、印象的な症例があるといいます。

「健康診断で肝酵素の上昇が見つかり、肝臓の問題として経過を見られていた子が、定期的な嘔吐をきっかけに当院へ来院されたことがありました。詳しく診ていくと、肝臓の問題ではなく、心不全によるうっ血が肝臓や消化管に影響している状態でした。心不全に対する治療でうっ血が改善すると、肝酵素も、続いていた嘔吐も改善しました」

どちらのケースでも大切だったのは、「数値が高いから薬を続ける」「数値を正常に戻す」ということではなく、その数値が本当に治療を必要とする異常なのか、体の中で何が起きているのかを整理することでした。今回お話しした二つの症例は、私が得意とする循環器内科の視点から、診断や治療方針を見直すきっかけに気づけた症例です。一方で、その逆もあります。私自身も得意領域以外では、院内の別の獣医師や、飼い主さんが受診されたセカンドオピニオン先の専門獣医師の意見を踏まえて、自分の見立てや方針の問題に気づき、判断を改めることがあります。だからこそ、一人の獣医師の判断だけで完結させず、それぞれの得意領域を持ち寄ることが大切だと考えています。これは心臓病に限った話ではありません。どの検査値も、その数値だけで病名や治療方針が決まるのではなく、全身状態や他の検査、症状と合わせて考える必要があります。

「正常だったから絶対に大丈夫」でもない。健診結果とのつきあい方

─ 健康診断を受けた後、飼い主さんに「これだけは知っておいてほしい」ということはありますか。

「健診後に知っていただきたいのは、検査結果は『病気かどうかを白黒つけるもの』ではなく、その子の今後を考えるための材料だということです。異常値があると不安になると思いますが、基準値から外れているからといって、すぐに病気と決まるわけではありません。一方で、正常範囲内だからすべての病気が否定された、というわけでもありません」

村田先生には、夜間救急で診療していた頃の忘れられない経験があります。

「少し前に健康診断を受けて大きな異常は指摘されていなかった猫ちゃんが、うっ血性心不全で来院されたことがありました。これは、健康診断に意味がないという話でも、健康診断を担当した獣医師が病気を見落としたという話でもありません。健康診断は、その時点で、その検査で拾える範囲の異常を確認するものです。特に猫の心臓病では、安定している時期には、聴診、一般的な血液検査、胸部レントゲン検査を行っても、異常として捉えにくいことがあります。一方で、猫では心不全が一過性に悪化して表面化することもあり、急性期を乗り越えて状態が安定すると、利尿薬を減量したり休薬できる例も経験します」

「だからこそ、異常値を過剰に怖がりすぎないことと同じくらい、『正常だったから絶対に大丈夫』と考えすぎないことも大切です。結果を見て終わりにするのではなく、その後の様子や変化も含めて、その子の状態を見ていく必要があります」

飼い主様へのメッセージ

─ 最後に、この記事を読んでいる飼い主さんへメッセージをお願いします。

「健康診断の結果で異常値が出ると、不安になるのは当然だと思います。ただ、基準値から外れているからといって、すぐに病気と決まるわけではありません。一方で、正常範囲内だからすべて安心、というわけでもありません。大切なのは、その結果がその子にとってどういう意味を持つのかを、年齢、症状、過去の検査結果、生活背景と合わせて整理することです」

「健康診断は、受けて終わりではなく、結果をどう読むかまで含めて意味があります。健診結果を見て不安なことや、判断に迷うことがあれば、結果用紙だけで悩まずにご相談いただければと思います。当院では、そうした健診後の悩みや判断の難しさに向き合えるよう、獣医師同士が相談しながら診療方針を整理できる体制を、今後も整えていきたいと考えています。その子にとって何を確認すべきか、ご家族と一緒に考えられる病院でありたいです」

千歳船橋あむ動物病院 基本情報

医院名千歳船橋あむ動物病院
院長村田 結皆 院長
住所〒156-0054 東京都世田谷区桜丘5-20-14 シンエイ第3ビル1階
電話番号050-1722-2163
最寄り駅小田急線「千歳船橋」駅 徒歩3分
診療対象犬・猫
診療内容一般診療、科目別チーム診療(循環器科ほか)、健康診断、予防診療
診療受付時間最新の受付時間は公式HPをご確認ください
休診日水曜
予約予約優先制(WEB予約可。受付方法の詳細は公式HPをご確認ください)
支払い方法現金、各種クレジットカード/ペット保険は窓口精算非対応。診療後、飼い主様ご自身で保険会社へご請求ください
駐車場専用駐車場なし(近隣駐車場をご利用ください)
公式HPhttps://am-ah.jp/

世田谷区で犬・猫の健康診断ができる動物病院一覧を見る


取材・監修者

PetPort編集部

PetPort

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獣医師さんへの取材を通じて、ペットの健康と動物病院の正しい情報をお届けします。

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