猫が水をよく飲む・食べないのは病気?受診の目安と原因を解説

猫が水をよく飲む・食べないのは病気?受診の目安と原因を解説

「最近、うちの子の水を飲む量が多いな」
「食欲も落ちている気がする」
このように感じたことはありませんか?
猫は本来あまり水を飲まない動物として知られています。
そんな猫が、急に水を飲む量が増えたときは重大な病気のサインかもしれません。
飲水量の増加は多飲とも言われ、食欲不振もある場合は腎臓病の初期症状の可能性があります。

この記事では、

  • 正常な飲水量と受診する際の目安
  • 猫が水をよく飲む原因
  • 多飲多尿のとき考えられる主な病気

などについて解説します。
また、慢性腎臓病や糖尿病の検査方法や早期発見のポイントも解説しています。

「最近、うちの子の様子が少し気になるな」と感じている飼い主様は、ぜひ参考にしてください。

目次

健康な猫の飲水量と飲み過ぎの基準は?

健康な猫が1日で飲む水の量の目安は、体重1kgあたりで約40〜50mlとされています。
体重4kgの猫であれば1日160〜200ml程度が正常範囲です。

ただし、これはドライフードを主に食べている場合のおおよその目安です。
ウェットフードを食べている猫は、フードからも多くの水分を摂ることができるため、水皿から水を飲む回数や量が少なくなります。
猫の飲水量を量る場合はフードの種類も考慮しましょう。
飲水量を測定するには、朝決まった量の水を水皿に入れておき、翌朝に残った水の量を量るのが簡単です。
「なんとなく飲水量が多い」と感じられる場合は、このように数字で確認すると状態を判断する助けになったり、病院受診時に説明がしやすくなります。

どのくらい水を飲んでいたら病院を受診するべき?

体重1kgあたり約60ml以上の水を1日で飲んでいる場合は多飲と判断されるため、病院を受診した方が良いと考えられます。
しかし、飲水量は気温の変化や食べているものによって変化するという点には注意が必要です。
例えば、気温の高い日は普段より多めに水を飲むことがあります。
気温の変化による飲水量の増加は一時的なものと考えられるため、それだけでは異常と言えません。

異常な飲水量の増加に早めに気がつくためには、日頃から猫がどのくらいの水を飲んでいるのかを記録しておくことが重要です。

もし、気温や食べているものに変化がないにもかかわらず、いつもより明らかに飲水量が多い日が続く場合は病院を受診してみましょう。

水を飲まない場合も注意が必要

猫が水を飲まない場合も注意が必要です。
水を飲まないことで脱水症状が進み、病気が悪化する原因になることがあるためです。

例えば、猫の飲水量の低下は脱水が悪化する原因になります。
脱水の悪化は腎臓への大きな負担となり、腎臓病を引き起こす原因となる場合があります。

猫が水をよく飲む原因は?

猫が水をよく飲むようになる主な原因は病気によるものです。
特に、病気がきっかけで尿量が増えることで過剰に失われた水分を補うために飲水量が増えることがあります。

水をよく飲む原因として具体的には、

  • 慢性腎臓病
  • 糖尿病
  • 甲状腺機能亢進症

などが挙げられます。
それぞれ見ていきましょう。

慢性腎臓病とは

猫の多飲の原因として最も頻繁に見られるのが慢性腎臓病です。
慢性腎臓病は高齢の猫の30〜40%が罹るとも言われており、10歳を超えると特に注意が必要な病気になります。

腎臓の役割は血液中の老廃物を尿として排出することと、尿を濃縮することです。
慢性腎臓病になると、腎臓の尿を濃縮する力が落ちるため、薄い尿がたくさん出るようになります。
このような状態を多尿と呼び、体が脱水状態になることを防ぐために多飲になります。
また、腎臓が血液中の老廃物を尿として排出する力も衰えるため、毒素が血液中に蓄積し吐き気を感じ、食欲不振が引き起こされます。

慢性腎臓病は見た目では気づきにくい?

慢性腎臓病は見た目では気づきにくい病気です。
腎機能が低下している初期段階では症状や見た目にはほとんど現れません。
猫の食欲や元気の低下に飼い主様が気づく頃には、すでに腎臓機能の多くが失われていることも少なくありません。
そのため、猫の多飲や食欲不振といったサインを見逃さないようにすることと、定期的な健康診断が重要です。

慢性腎臓病を見逃さないために行う検査

猫の慢性腎臓病を見逃さないためには血液検査や尿検査が重要です。
慢性腎臓病の重症度を評価する指標となるガイドラインも作成されています。

腎機能を評価する代表的な指標には、

  • BUN(尿素窒素)
  • CRE(クレアチニン)
  • SDMA

が挙げられます。
これらは血液検査を行うことで得られる指標です。

特にSDMAは腎機能の低下を早い段階で見つけることができる指標です。
BUNとCREは血液中の老廃物の量を表す項目です。
これらは、腎臓で血液中から分離され尿として排出されます。
腎機能が低下すると、腎臓が老廃物を処理する能力が低下するため、血液検査で基準値を超えた値として検出されるようになります。

また、尿検査で尿の濃さやタンパク尿がないかを調べることも重要です。
慢性腎臓病では尿が薄くなったり、タンパク尿が見られるようになったりします。
その他にも、血圧測定や超音波検査も腎臓の状態を知るために有効です。

慢性腎臓病の治療

慢性腎臓病の治療の目標は治すことではなく、進行を遅らせて生活の質を維持することです。
失われた腎機能は、残念ですが回復させることができません。

主な治療の方法には、

  • 食事療法
  • 脱水に対する治療
  • 薬による治療

が挙げられます。

食事療法は腎臓への負担を減らすために療法食を使用する治療です。
療法食はタンパク質、リン、ナトリウムを制限したものが推奨されています。
また、療法食を導入する際には数週間かけてゆっくりと行う必要があることに注意が必要です。

脱水に対する治療は水分摂取量が増えるような工夫や皮下点滴を行います。
新鮮な水を複数置くことや、ウェットフードを与えることで水分摂取量を増やすことができます。
皮下点滴は自力での飲水では水分量が足りない場合や、病気が進行した場合の脱水を補うための治療です。

薬による治療は慢性腎臓病に伴う症状に対して行われます。
慢性腎臓病に伴う症状には、

  • 高血圧
  • タンパク尿
  • 貧血
  • 吐き気
  • 食欲不振

などがあり、それぞれの症状にあった薬を使用して治療が行われます。

糖尿病とは

糖尿病は、腎臓病と並んで猫の多飲の大きな原因になる病気です。
糖尿病の初期段階では多飲に加えて、食欲の増加が見られます。
一方で、深刻な合併症を引き起こしていると食欲を失うことがあります。
このように、多飲と食欲の変化は糖尿病の猫においても重要なサインになります。

糖尿病で多飲になる理由

糖尿病で多飲となる理由は、尿に出た糖が尿の量を増やし、それにつられて飲水量が増加するためです。
糖尿病では血糖値が高まり、本来尿へ排出されないはずの糖が尿へ漏れ出ると同時に、尿の量も多くなります。
大量の尿が出ることで、体が水分不足の状態になり強い喉の乾きを感じて多飲になります。

糖尿病の検査

糖尿病の検査では尿検査と血液検査を行います。
血糖値は、猫の場合ストレスによって一時的に上昇するためこれらの検査を組み合わせる必要があります。

尿検査は高血糖が一時的なものなのか、持続的なものなのかを判断するために重要です。
通常、猫の尿に糖が出ることはありません。
しかし、血糖値が持続的に高い状態が続くと糖が尿中に漏れ出します。
このように、尿の中に糖が出ており、血糖値も明らかに高い数値が出ている状態では、持続的な高血糖があると考えられます。

糖尿病の治療

糖尿病の治療目的は猫の生活の質を改善させ維持することです。
治療では重篤な合併症に注意しながら進めることも大切になります。

糖尿病の主な治療はインスリン療法です。
糖尿病治療では定期的な血糖値のモニタリングを行いながら食事療法と体重管理を行います。

インスリン療法は猫の血糖値をできるだけ正常範囲内で安定させるための治療です。
この治療はインスリン製剤を猫に皮下注射する方法です。
また、自宅で行う食事管理と体重管理も重要です。
糖尿病の猫には、低炭水化物・高タンパク質の療法食が推奨されます。
また、肥満はインスリンの効き目を悪くしてしまうため、適切な体重管理が必要です。

多飲になるその他の病気

猫が多飲になるその他の病気としては、甲状腺機能亢進症などがあります。

甲状腺機能亢進症は喉にある甲状腺から過剰に甲状腺ホルモンが分泌される病気です。
この病気は10歳以上の高齢猫に多く、多飲の他に食欲旺盛なのにもかかわらず体重が減っていくという症状が特徴的です。
甲状腺機能亢進症は血液検査で甲状腺ホルモンを測定することで診断されます。

治療の方法には、

  • 薬による治療
  • 食事療法
  • 手術

が挙げられます。
薬による治療では、ホルモンの合成を抑える抗甲状腺薬が使われます。
この治療は完治を目指すものではなく、症状や甲状腺ホルモンの値をコントロールするためのものです。
食事療法はホルモンの材料になるヨウ素を制限した療法食を使用した治療です。
これにより通常のフードを食べている場合と比べて甲状腺ホルモンの生成を抑えられる可能性があります。
しかし、他のフードやおやつを一切与えてはいけないというルールを守る必要があるため実施の際には注意が必要です。
異常な甲状腺は手術によって摘出することもあります。
成功すれば根治を期待できる可能性がありますが、実施にあたっては麻酔リスクや合併症の可能性などの慎重な評価が必要です。

病気の早期発見のために、定期的な健康診断がおすすめ

猫が水をよく飲んだり食欲に変化が見られたりする病気は、定期的な健康診断によって早期に発見することができます。

今回紹介した病気は血液検査や尿検査など一般的な健康診断の項目で見つけることができる病気がほとんどです。
「うちの子にしばらく健康診断を受けさせていないかも」と思われた飼い主様は、ぜひ一度かかりつけの先生と相談してみてください。

また、健康診断の相談をする際には、猫の普段の様子を書き留めたメモがあると便利です。
普段の飲水量や食欲を記録したメモをかかりつけの先生に見せることで、その子にあった健診内容を考えることができます。

猫の症状に関する関連記事もあわせてご覧ください。

猫がご飯を食べない原因はこちら

猫の慢性的な食欲不振の原因はこちら

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まとめ

猫の多飲多尿や食欲の変化はさまざまな病気の症状として注意が必要です。
日頃から飲水量の変化や食欲の増減について記録しておくことが有効ですが、判断が難しい場合も多いです。
飲水量の増加や食欲の変化が続く場合は早めに動物病院を受診してみましょう。

また、定期的な健康診断で病気を早く見つけることができれば、猫の生活の質をより長く維持することにつながります。
早めに対応することで、飼い主様と猫との大切な時間をより長く保つことができるかもしれません。

この記事の執筆
陶山雄一郎
陶山雄一郎
フリーランス獣医師
経歴・資格
2014年 麻布大学獣医学部獣医学科卒業

動物臨床医学会所属
動物臨床医学会獣医総合臨床認定医
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