犬が元気なく震えているのはなぜ?|原因と緊急度の見分け方を獣医師が解説

犬がブルブル震えながらぐったりしている姿を見ると、飼い主様は
「何か重い病気かも?」
と焦ってしまいますよね。
犬の震えには寒さや恐怖といった生理的な原因もありますが、なかには早急な治療が必要な病気のサインであるケースも珍しくありません。

今回は、犬が元気なく震えるときに疑われる病気や緊急度の見分け方などを獣医師の目線でわかりやすくお伝えします。
「今すぐ動物病院に連れて行くべき?」
「もう少し様子を見ていい?」
そんな判断に迷っている飼い主様が落ち着いて対応できるようになるためのガイドとして、ぜひ最後まで読んでみてください。

目次

犬が元気なく震えるのはなぜ?考えられる5つの原因

犬が元気なく震えているときは体のどこかに異常が生じているサインです。
原因は軽度なものから命に関わる重篤なものまで幅広く、早期の見極めが大切になります。

ここでは犬が元気なく震える代表的な原因を解説します。

関節炎・椎間板ヘルニア

関節炎や椎間板ヘルニアはシニア犬で多く、強い痛みをともなうことがあります。

関節炎は骨と骨をつなぐ関節のクッション(軟骨)がすり減って炎症を起こす病気です。
高齢の犬でゆっくり進行することが多いため、
「最近なんだか動きが鈍い」
と感じたら関節炎のサインかもしれません。

椎間板ヘルニアは背骨の間にあるクッション(椎間板)が飛び出して神経を圧迫する病気です。
椎間板ヘルニアでは後ろ足の麻痺が見られることもあります。
関節炎や椎間板ヘルニアで痛みが強くなると、犬は体をこわばらせるように震えることがあります。
震え以外にも

  • 抱き上げるとキャンと鳴く
  • 階段の昇り降りを嫌がる
  • 散歩に行きたがらない

といった行動の変化があれば、痛みを感じている可能性が高いです。

脳疾患(てんかん・脳腫瘍など)

てんかんは犬にも比較的多くみられる脳の疾患で、発作時には全身がけいれんしたり、意識がぼんやりしたまま小刻みに震えたりといった症状が現れます。
てんかんには発作の直前に落ち着きがなくなる「前兆期」や、発作後にしばらくぼんやりする「発作後期」があります。
そのため、発作そのもの以外の時間帯でも、なんとなく元気がないと感じる飼い主様は少なくありません。

シニア犬では脳腫瘍が原因で震えが出ることもあるため要注意です。
同じ方向にぐるぐる回り続ける旋回運動や性格の急な変化など、ほかの神経症状をともなう場合はとくに早めの受診をおすすめします。
脳疾患はMRI検査で確定診断がつくケースが多いです。
気になる症状があれば、できるだけ動画で記録したうえで獣医師に相談しましょう。

中毒(チョコレート・キシリトールなど)

何かしらの中毒でも震えが見られることが多いです。
チョコレートに含まれるテオブロミンや、ガム・歯磨き粉に入っているキシリトールなどが犬に中毒を起こすことが知られていますね。
「何かを食べた形跡がある+震えている」という組み合わせは緊急度が極めて高いため、すみやかに動物病院へ連絡してください。
可能であれば、食べた物の現物や製品パッケージの写真を持参すると、獣医師が成分を特定しやすくなり、適切な処置につなげられます。
日常の予防策としては、犬の届く範囲にチョコレートやガムを置かないこと、散歩中の拾い食いに注意することが基本です。

低血糖

低血糖は、子犬やチワワ・ヨークシャーテリアなどの超小型犬で起こりやすいです。
血液中のブドウ糖が急激に低下すると、震えやふらつきなどの症状が見られます。
とくに体の小さな子犬は体内にエネルギーを蓄える力が弱く、食事を1回抜いただけでも危険な低血糖に陥ることがあるため油断できません。
低血糖は重症化すると意識を失ったりけいれんを起こしたりする危険性もあり、対処は一刻を争います。
日ごろから食事の時間や量を安定させ、長時間の空腹をつくらないことが低血糖の予防のカギになります。

内臓疾患(腎臓病・膵炎など)

腎臓病や膵炎などの内臓疾患でも震えが見られることは少なくありません。
腎臓病が進行すると、体内に老廃物がたまり「尿毒症」と呼ばれる状態に陥ることがあります。
尿毒症では震えに加えて、食欲の著しい低下や嘔吐の繰り返しなど多彩な症状が出るのが特徴です。
腎臓病はシニア犬に多い病気ですが、先天的な腎臓の問題を抱えている場合は若い犬でも発症する可能性があるため注意しましょう。

膵炎は食べ物の消化を助ける膵臓に炎症が起きる病気で、激しい腹痛をともなうことが多いです。
痛みがひどいと、犬は「祈りのポーズ」と呼ばれる前足を伸ばして腰を上げた姿勢をとりながら震えることがあります。
腎臓病や膵炎は、いずれも血液検査や画像検査で比較的早い段階から異常を捉えられるため、定期的な検診が愛犬の命を守る鍵になります。

犬の震え方の種類で緊急度を判断できる?

同じ「元気がなく震えている」状態でも、震え方のタイプによって緊急度は大きく異なってきます。
犬の体がどんなふうに揺れているかをよく観察すると、急ぐべきかどうかの目安になります。
ここでは震え方そのものにフォーカスして、タイプ別の特徴をみていきましょう。

小刻みな震えと全身を大きく揺さぶる震えの違い

痛みやストレスなどが原因のときは、体の一部または全身が細かくプルプルと揺れる震えが多く見られます。
この場合は意識がはっきりしていて、呼びかけにも反応するのが特徴です。

一方で体全体が大きくガクガクと震えているときは、低血糖や中毒など体内で急激な変化が進んでいるサインかもしれません。
犬に全身を大きくふさぶる震えが見られる場合は早めに動物病院に相談しましょう。

さらに注目したいのが、震えが体のどの部位に出ているかという点です。
後ろ足だけが震えている場合は関節のトラブルが疑われ、全身に及んでいる場合は中毒などの全身性の問題が考えられます。
犬が震えているときは、震えの大きさや範囲に注目してみてください。

「震え」と「発作」は別物?

震えと発作は見た目が似ているため混同しがちですが、実は性質がまったく異なります。
震えの場合、犬は周囲の声かけに反応でき、自分の意思で体を動かせるのが一般的です。

対して、てんかんなどによる発作では意識がなくなり、呼びかけにも反応しないまま全身が硬直したりガクガクとけいれんしたりするのが特徴です。
発作中は

  • 口をくちゃくちゃさせる
  • 泡を吹く
  • 失禁する

などの症状をともなうケースもあります。
もし
「呼びかけても目の焦点が合わない」
「体が自分の意思で制御できていないように見える」
と感じたら、それは震えではなく発作の可能性があります。
発作は脳に関わる緊急性の高い症状であるため、落ち着いて安全を確保したうえで一刻も早く動物病院へ連絡してください。

こんな震え方は今すぐ動物病院へ!危険サインとは

犬が震えているときに
「もう少し様子を見ようかな」
と迷う飼い主様は多いかもしれません。
しかし、犬は私たちが思っている以上に我慢強い動物で、症状が表に出たときにはすでに危険な段階に達しているケースもあります。
以下のようなサインがひとつでも当てはまるなら、迷わず動物病院を受診しましょう。

  • ぐったりして起き上がれない
  • けいれんが数分以上つづく
  • 意識がもうろうとしている
  • 嘔吐や下痢を繰り返している
  • 呼吸が異常に荒くなっている

歯茎の色が白っぽかったり、体を触ると極端に冷たかったりする場合もショック状態の可能性があるため要注意です。
また、何か有害なものを誤食した心当たりがある場合は、時間の経過とともに症状が悪化するリスクが高いため、症状が軽そうに見えてもためらわず受診しましょう。

犬が元気なく震えるときに自宅でできること

犬が震えているとき動物病院に向かうまでの間にも、飼い主様にできることは意外と多くあります。
「パニックになって何もできなかった」
という声はよく聞きますが、事前に対応を頭に入れておくと冷静な判断につながります。

犬が震えているときは、まず刺激の少ない静かな場所に移し、落ち着ける環境を整えてあげてください。
テレビや照明などの強い光と音を遠ざけるだけでも、犬のストレスはぐっと軽減されます。
低血糖が疑われる場合はガムシロップを歯茎に少量塗る応急処置が有効です。
しかし、意識がはっきりしない状態では誤嚥のリスクがあるため無理に口へ入れるのは避けてください。
震えが続いている最中は体を強くさすったりゆすったりせず、そばで見守りながら状態の変化を記録していくことが大切です。
不安なときはかかりつけ医に電話を入れるだけでも、適切な対処法を教えてもらえるケースが多いので覚えておきましょう。

動物受診の際は情報をまとめておくと、診察がスムーズに進みます。
伝えたい項目は

  • 震えが始まった時刻と状況
  • 持続時間と頻度
  • 食欲・排泄の変化
  • 口にした可能性のある異物
  • 持病や服用中の薬

の5つです。
メモアプリなどに書き留めておくと、慌てていても漏れなく伝えられます。
さらにおすすめなのが、震えている様子をスマホで動画撮影しておくことです。
動物病院に着く頃には症状が治まっていることも多く、映像は獣医師にとって貴重な手がかりになります。

震えが出る前に気づくには?健康診断のすすめ

ここまで紹介した震えの原因の多くは、定期的な健康診断で早い段階に発見できます。
検査で異常を先回りできれば、震えが起きる前に治療をスタートできるケースも珍しくありません。
震えの背景に潜む腎臓病などの内臓疾患は、血液検査で見つかるケースも多いです。
レントゲンやエコーでは関節や腹腔内の異常も確認できます。
シニア犬は年1〜2回の検査が推奨されているので、かかりつけ医と相談しながら年齢に合った健診プランを組み立ててみましょう。
「うちの子はまだ若いから大丈夫」
と油断せず、予防の視点を日頃から意識しておくことが大切です。

定期健診に加えて、毎日の観察も早期発見には欠かせません。
ちょっとした変化にいち早く気づけるのは、毎日一緒に過ごしている飼い主様ならではの強みです。
「いつもと何か違うな」
という直感は的を射ていることが多いです。
気になることがあれば些細なことでも獣医師に相談しておくと安心につながります。
日々の観察記録をアプリやノートに残しておくと、受診時にも活用できて便利です。

まとめ

犬が元気なく震えている背景には、さまざまな病気が隠れている可能性があります。
震えの大きさや発作との違いを見極めることで緊急度をある程度判断できますが、迷ったときは自己判断せず受診するのが安心です。
自宅では安全な環境を整え、症状を動画やメモで記録しておくと、獣医師への情報共有がスムーズになります。
そして何より大切なのは、定期的な健康診断で病気の芽を早いうちに摘んでおくことです。

「何もなくてよかった」
健康診断のたびにそう言えることが、飼い主様にとっていちばんの幸せかもしれません。

この記事の執筆
陶山雄一郎
陶山雄一郎
フリーランス獣医師
経歴・資格
2014年 麻布大学獣医学部獣医学科卒業

動物臨床医学会所属
動物臨床医学会獣医総合臨床認定医
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