「最近うちの犬がやたらと寝てばかりいる気がする…」
そんなふうに感じたことはありませんか?
犬はもともとよく眠る動物ですが、いつもより明らかに元気がなく寝てばかりいる場合は、病気のサインかもしれません。
犬の睡眠時間が多いと感じたとき
「ただの寝すぎ? それとも病気?」
と判断に迷う飼い主様も多いと思います。
この記事では、
- 犬の正常な睡眠時間の目安
- 寝てばかりいるときに疑われる病気
- 動物病院を受診すべきタイミング
などを獣医師がわかりやすく解説します。
愛犬の「いつもと違う」に気づくためのヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。
犬が寝てばかりいるのは普通?正常な睡眠と「寝すぎ」の判断基準
犬が寝てばかりいるように見えても、実はそれが正常な範囲であるケースは意外と多いです。
とくに犬は浅い眠りの割合が人間より大きく、ウトウトしている時間も合わせるとかなりの時間を睡眠に費やしています。
まずは年齢や犬種ごとの標準的な睡眠時間を押さえて、本当に寝すぎかどうかを冷静にチェックしてみましょう。
年齢別の睡眠時間の目安
成犬の平均睡眠時間は1日12〜14時間程度といわれています。
人間の感覚からすると
「多すぎる」
と思うかもしれませんが、犬にとっては標準的な睡眠量にあたります。
子犬や生後数か月の幼犬はさらに長く、1日18〜20時間ほど眠ることも珍しくありません。
成長期の子犬は体をつくるために多くのエネルギーを消費しており、その回復のために長い睡眠が必要になるためです。
一方、7歳以上のシニア犬になると活動量が自然と落ちるぶん睡眠時間が増え、1日16〜18時間ほど寝ることがあります。
ただし、これらはあくまでも目安であり、個体差が大きい点には注意が必要です。
普段から犬の睡眠パターンをなんとなくでも把握し、ちょっとした変化にも気づけるようにしましょう。
犬種による睡眠時間の違い
大型犬は小型犬に比べてエネルギー消費量が大きく、体を回復させるために長めの睡眠を必要とする傾向があります。
セントバーナードやグレート・デーンなどの超大型犬では、1日16時間以上眠っていても問題ありません。
また、ブルドッグやパグのような短頭種は呼吸に体力を使いやすいことから比較的よく眠る傾向が見られます。
逆に、ジャックラッセルテリアのような活動的な犬種が急に寝てばかりになった場合は、何らかの異常が隠れている可能性が高まります。
犬種ごとの睡眠の特性を知っておくことも、異変に気づくための大切な土台です。
「いつもとの差」がいちばんのバロメーター
睡眠時間は数字だけで判断するよりも、大切にしたいのは「普段と比べてどうか」という視点です。
食事や散歩に呼んだときの反応が鈍くなった、おもちゃに興味を示さなくなったなど、行動面の変化はわかりやすい手がかりになります。
明らかに寝ている時間が増えたうえに、好きだったごはんや散歩への反応も薄いと感じたら、それは体の異変を疑う最初のサインかもしれません。
日頃から愛犬の睡眠パターンを把握しておくことが、病気の早期発見につながる第一歩です。
次に、実際に寝てばかりいるときに疑われる具体的な病気について解説していきます。
犬が元気なく寝てばかりいるときに考えられる病気

「よく寝る子だから」
と見過ごしていた睡眠の増加が、実は病気の初期症状だったというケースは決してめずらしくありません。
犬は本能的に弱っている姿を隠そうとするため、飼い主様が気づいたときにはすでに病気が進行していることもあります。
ここでは、犬が元気なく寝てばかりいるときに疑われる代表的な疾患を見ていきましょう。
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甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症は、中高齢の犬に多く見られるホルモン疾患です。
代謝をコントロールする甲状腺ホルモンの分泌量が減少すると、体全体のエネルギー代謝が低下し、犬は寝ていることが多くなります。
甲状腺機能低下症では
- 被毛がパサつく
- 体重がじわじわ増える
- 寒がるようになる
といった症状が並行して現れることが多いため、複数の変化が重なっていないかよく観察してみましょう。
甲状腺機能低下症は血液検査でホルモン値を測定すれば比較的スムーズに診断がつき、毎日の投薬で症状の改善が期待できます。
貧血
貧血になると全身に十分な酸素が行き渡らなくなるため、犬は体力を温存しようと横になる時間が増えます。
歯茎や舌の色がいつもより白っぽく見えたら、貧血を起こしているサインかもしれません。
散歩中にすぐ息切れする、立ち上がるのを嫌がるといった行動の変化も手がかりになります。
犬の貧血の原因は消化管からの出血や免疫の異常などさまざまで、治療のアプローチも大きく異なります。
貧血は早期の血液検査が正確な診断への近道になるため、気になる変化があれば早めに獣医師へ相談しましょう。
感染症
細菌やウイルスによる感染症にかかると、犬の体は病原体と戦うために免疫反応へエネルギーを集中させます。
その結果、だるさや倦怠感から寝てばかりの状態になることも少なくありません。
感染症で発熱をともなっている場合は、耳の内側や足先がいつもより熱く感じられることがあります。
犬レプトスピラ症やパルボウイルス感染症などはワクチンで予防できるため、予防接種のスケジュールを改めて確認しておきましょう。
心臓病
僧帽弁閉鎖不全症をはじめとする心臓病が進行すると、全身への血液循環が悪化して犬は疲れやすくなり、寝ていることが多くなります。
散歩中に立ち止まる回数が増えた、少し動いただけで呼吸が荒くなるといった変化が見られたら、心臓のトラブルを疑いましょう。
とくに僧帽弁閉鎖不全症は小型犬のシニア期に多い疾患であり、聴診やエコー検査で早い段階から異常を発見できます。
適切な投薬を続けることで進行を遅らせ、快適な生活を維持できるケースも多いです。
シニア犬が寝てばかりいるときはとくに注意!疑われる病気

7歳を超えたシニア犬が急に寝てばかりいるようになった場合、単なる加齢による体力低下ではなく、年齢特有の病気が背景に潜んでいるケースがあります。
「歳だから仕方ない」
と片づけてしまうと、治療の適切なタイミングを逃してしまいます。
シニア期は体のあちこちにトラブルが起きやすい時期だからこそ、小さな変化を見逃さない意識が大切です。
ここではシニア期に気をつけたい病気についてご紹介します。
認知機能不全症候群(認知症)
犬にも人間と同様に認知症が存在し、高齢になるほど発症リスクが上がることが知られています。
部屋の隅で動けなくなる、昼夜のリズムが逆転するなどが認知症の代表的な症状です。
認知症では昼間はぼんやり寝ていることが増えますが、夜になると落ち着きなく徘徊するパターンがみられることがあります。
認知症は早い段階でサプリメントや環境調整などの対策を始めると、進行をゆるやかにできる可能性があります。
飼い主様が日中に適度な刺激(短い散歩や知育おもちゃなど)を与えてあげることも、脳の活性化に有効です。
腫瘍(がん)
シニア犬では腫瘍の発生率が高まり、体内で腫瘍が進行するとエネルギーが奪われて慢性的なだるさにつながります。
とくに脾臓や肝臓にできる腫瘍は初期に目立った症状が出にくく、
「なんとなく元気がない」
「寝てばかりいる」
といった漠然とした変化だけが唯一の手がかりになることも少なくありません。
体表のしこりと違い、お腹の中の腫瘍は触っただけでは見つけられないケースがほとんどです。
犬は定期的な血液検査や画像検査を受けることで、見た目ではわからない体内の異常をいち早くキャッチできます。
シニア期に入ったら半年に1回のペースで検査を受けておくと、万が一の場合でも早期治療につなげやすくなります。
慢性腎臓病
慢性腎臓病はシニア犬に非常に多い疾患のひとつです。
腎機能の低下にともない体内に老廃物が蓄積すると、だるさや食欲低下から活動量が目に見えて減っていきます。
水をやたらと飲む、おしっこの量が以前より増えたと感じたら、腎臓に負担がかかっているサインかもしれません。
慢性腎臓病は完治は難しい病気ですが、早期発見して食事管理や投薬を開始すれば進行を大幅に遅らせることが可能です。
腎臓への負担を軽減する療法食も数多く市販されているため、獣医師と相談しながら最適なものを選びましょう。
寝てばかりいる犬を動物病院に連れて行くべき?受診の目安
「犬が寝てばかりいるけど、動物病院に連れていくべき?」
このように悩まれる飼い主様は多いと思います。
犬は我慢強い動物で、かなり辛い状態でも表に出さないことがあります。
以下のチェックポイントにひとつでも当てはまれば、できるだけ早めに動物病院を受診しましょう。
- 2日以上にわたり明らかに元気がなく、寝てばかりいる状態がつづいている
- 食事をほとんど口にしない、または水も飲まない
- 嘔吐や下痢を繰り返している
- 呼吸が荒い、咳が出る
- 歯茎の色が白っぽい、または体を触ると冷たい
とくに「食べない+寝てばかり」の組み合わせは、体のどこかで深刻なトラブルが進行しているケースが多いため要注意です。
震えなど、ほかの気になる症状が重なっている場合はさらに緊急度が高まります。
受診の際には
- いつから寝てばかりなのか
- 食事量や排泄の変化
- 直近で変わったこと(フードの切り替え・引っ越しなど)
をメモにまとめておくと、診察がスムーズに進みます。
持病がある子や服用中の薬がある場合は、そちらの情報も忘れずに伝えましょう。
余裕があれば、犬の様子をスマホで動画撮影しておくのもおすすめです。
動物病院に着く頃には一時的に元気を取り戻していることも珍しくなく、そんなとき映像は獣医師にとって非常に貴重な診断材料になります。
犬が元気なく食欲もない場合は以下の記事も参考にしてください。
※クラスター関連記事リンク設置:犬が元気なく食欲もないときの原因と対処法
まとめ
犬が元気なく寝てばかりいる背景には、甲状腺機能低下症や心臓病などさまざまな病気が隠れている可能性があります。
「歳だから」
「この子はよく寝る子だから」
と思い込まず、普段との違いを敏感にキャッチすることが早期発見への第一歩です。
今回ご紹介した疾患の多くは、定期的な健康診断の血液検査や画像検査で早い段階から兆候をとらえることができます。
とくにシニア犬は年1〜2回の検診が推奨されており、症状が出る前に異常を見つけることで治療の選択肢もぐっと広がります。
「何もなくてよかったね」
健診のたびにそう笑い合えることが、飼い主様にとっても愛犬にとってもいちばんの安心につながるはずです。
気になることがあれば些細なことでも、かかりつけの獣医師に相談してみてください。


