犬が元気ない原因は?|症状別に考えられる病気と受診の目安を獣医師が解説

愛犬の元気がないとき飼い主様は
「もしかして病気?」
という不安になるのではないでしょうか。
犬が元気をなくす原因は、一時的なストレスや疲れから内臓疾患まで多岐にわたります。

この記事では、犬の元気がないときに考えられる原因を症状別にわかりやすく整理し、受診の目安などを獣医師が詳しく解説します。
犬の元気がなく、
「様子を見ていい?」
「すぐ病院に行くべき?」
と迷っている飼い主様は、ぜひ最後まで読んでみてください。

目次

犬が元気ないときに確認したい5つのポイント

犬が元気ないと感じたとき、まず大切にしてほしいのは「焦らず観察すること」です。
動物病院を受診する場合にも、自宅での様子を正確に伝えられると診察の精度がぐっと上がります。

ここでは飼い主様にチェックしていただきたい5つのポイントを紹介します。

食欲に変化はないか

ごはんへの食いつきは、犬の体調を測るもっともわかりやすいバロメーターです。
普段は食いしん坊な犬が急にフードを残したり、おやつにも反応しなくなったりしたときは体の中で何かが起きているサインかもしれません。
いつものフードに口をつけないだけでなく、好物のおやつすら見向きもしない状態は、より深刻なサインです。

また、水を飲む量が極端に増えた場合は腎臓病や糖尿病などが疑われることもあるため、飲水量の変化もあわせて記録しておくと受診時に役立ちます。

嘔吐や下痢はないか

吐いたものの形状、便の状態は獣医師が原因を絞り込むうえで欠かせない情報になります。黄色い液体なら空腹時の胆汁逆流、赤〜茶色なら消化管からの出血など、嘔吐物の色だけでもかなりの情報量があります。
すぐに片づけてしまうと大切な手がかりを失ってしまうため、まずは記録をしましょう。
嘔吐物や便を撮影しておくことも大切です。

体温・呼吸に異常はないか

犬が元気ないときは体が熱くないかも確認しましょう。
体温は体温計で測るのが理想ですが、難しい場合は耳の内側や足先を触って普段との違いを確認するだけでも参考になります。
いつもより熱い場合は発熱が疑われ、逆に冷たい場合はショック状態や低体温の可能性があるため注意が必要です。

また、安静にしているのに呼吸が荒い、お腹を大きく使って苦しそうに息をしている場合は心臓や肺のトラブルが隠れていることも考えられます。

体を震わせていないか

犬が元気なく震えている場合は、痛みや低血糖などさまざまな原因が考えられます。
小刻みにプルプル震えているのか、全身がガクガクとけいれんしているのかで緊急度は大きく変わるため、震え方の特徴をよく観察しておくことが重要です。

犬が元気なく震えているときの原因や緊急度の見分け方は、以下の記事で詳しく解説しています。
※関連記事リンク設置(犬が元気なく震えている)

いつから・どのくらい元気がないか

犬が元気ない場合は
「昨日の夕方から急にぐったりしている」
「ここ数日じわじわ元気がなくなっている」
など、時間の経過を把握しておくと獣医師の判断材料になります。
急激に元気を失った場合は中毒や急性疾患の可能性があり、じわじわ悪化している場合は慢性疾患が疑われることが多いです。
変化に気づいた日時をスマホのメモアプリなどに記録しておくと、慌てているときでも漏れなく伝えられます。

犬が元気ないときに考えられる原因と病気

犬が元気ないときは、同時にどんな症状が出ているかを見ることで原因をある程度絞り込めます。
「元気がない+震え」「元気がない+食欲低下」のように、組み合わせるほど疑うべき病気の範囲が絞れます。

ここでは代表的な症状パターン別に、疑われる病気を整理していきましょう。

元気がなく震えている場合

震えと元気のなさが同時に見られるとき、その背景には

  • 痛み
  • 中毒
  • 脳疾患

などが潜んでいます。

たとえば、関節炎や椎間板ヘルニアといった体の痛みが原因のケースでは、抱き上げたときにキャンと鳴くなどの行動の変化が手がかりになりやすいです。
犬は痛みを言葉で伝えられないぶん、こうした小さなサインが重要な情報源になります。

また、チョコレートやキシリトールなど有害物質を口にした心当たりがある場合は、中毒による震えが疑われる緊急事態です。
中毒は一刻を争うため、食べた物の現物や製品パッケージの写真を持参のうえ、すみやかに動物病院へ連絡してください。

てんかんなどの脳疾患でも震えのような症状が現れることがあり、意識がぼんやりする、同じ方向にぐるぐる回り続けるなど神経症状をともなうのが特徴です。
発作の様子はスマホで動画を撮影しておくと、獣医師がMRI検査などの次のステップを判断する際に非常に役立ちます。

犬が元気なく震えているときの原因や緊急度の見分け方は、以下の記事で詳しく解説しています。
※関連記事リンク設置(犬が元気なく震えている)

元気がなく寝てばかりいる場合

犬はもともと1日12〜14時間ほど眠る動物ですが、いつもより明らかに睡眠時間が増えて好きだった散歩やおもちゃにも反応が薄い場合は注意が必要です。

とくにシニア犬の場合は加齢にともなう病気がいくつも重なりやすいため、より慎重な観察が求められます。
シニア犬で注意が必要なのは認知機能不全症候群(認知症)や腫瘍です。
とくに認知症では昼間はぼんやり寝てばかりいるのに、夜になると落ち着きなく徘徊するという独特のパターンがみられることも珍しくありません。
「歳だから仕方ない」と見過ごしてしまうと治療の適切なタイミングを逃す原因になるため、気になる変化があれば早めに獣医師へ相談しましょう。

犬が元気なく寝てばかりいるときの原因や受診の目安は、以下の記事で詳しく解説しています。
※関連記事リンク設置(犬が元気なく寝てばかりいる)

元気がなく食欲もない場合

元気と食欲が同時に落ちているときは、体の中で深刻なトラブルが進行しているサインである可能性が高まります。
食欲は犬の体調を映す鏡であり、ごはんを口にしなくなる背景には消化器から心臓まで幅広い不調が関わっているためです。

元気がなく食欲もない場合にとくに注意したいのが、膵臓の炎症である急性膵炎です。
膵炎ではお腹を丸めて震える「祈りのポーズ」が見られることが多く、重症化すると多臓器不全に進行するリスクも否定できません。
また、おもちゃなどの異物誤飲による腸閉塞でも、嘔吐とともに食欲が急激に落ちるのが特徴的なサインです。

消化器系以外では、心臓病にも注意しましょう。
心臓病で心臓のポンプ機能が弱まって全身への血液循環が悪化すると、犬は疲れやすくなって食欲も自然と落ちていきます。
散歩中に立ち止まる回数が増える、少し動いただけで呼吸が荒くなるといった変化があれば、心臓のトラブルを疑いましょう。

なお、犬が元気も食欲もないときは年齢や体格によって「様子を見ていい時間」が異なるため、少しでも不安を感じたら早めに受診するのが安心です。

犬が元気なく食欲もないときの原因と対処法は、以下の記事で詳しく解説しています。
※関連記事リンク設置(犬が元気なく食欲もない)

元気がなく吐いている場合

犬は人間に比べて嘔吐しやすい動物ですが、元気のなさと嘔吐が重なっているときは軽視できません。
吐いている原因の判断のヒントになるのが、吐いたものの色や内容物です。
たとえば白い泡状のものは胃液が混ざった状態で、一度きりであれば緊急性は低いケースがほとんどです。
ただし、これが何度も繰り返される場合は話が変わってきて、胃腸の炎症や膵炎が潜んでいる可能性も出てきます。

さらに心配なのが、嘔吐を繰り返しながらぐったりしているパターンです。
嘔吐が続く場合は、中毒や腎臓病など重篤な疾患が背景にあるケースも考えられるため、すみやかに動物病院を受診しましょう。

犬が元気なく吐いているときの緊急度の見分け方は、以下の記事で詳しく解説しています。
※関連記事リンク設置(犬が元気なく吐いている)

犬が元気ないときはすぐに動物病院へ行くべき?緊急度の見分け方

犬が元気ないとき
「もう少し様子を見ようかな」
と迷う飼い主様は多いかもしれません。
しかし、犬は私たちが思っている以上に我慢強い動物で、症状が表に出たときにはすでに深刻な段階に達していることもあります。

ここでは緊急度の段階別に、受診の目安を整理していきます。

今すぐ受診が必要なケース

犬が元気なく、以下のサインがひとつでも当てはまるなら、すぐに動物病院を受診してください。

  • ぐったりして起き上がれない
  • けいれんが数分以上つづく、または短時間に繰り返す
  • 嘔吐物や便に血液が混じっている
  • 呼吸が異常に荒く、横になれないほど苦しそう
  • 歯茎の色が白っぽい、体を触ると冷たい

とくに有害物質を誤食した心当たりがある場合は、症状が軽そうに見えても時間の経過とともに急変するリスクが高いため、ためらわず受診しましょう。
夜間や休日はお住まいの地域の夜間救急動物病院が頼りになるため、連絡先を事前に控えておくと安心につながります。

翌日までに受診したいケース

犬が丸1日ごはんを口にしない、水も飲みたがらないといった場合は翌日までには動物病院に相談しましょう。

嘔吐や下痢が数回続いている場合も、脱水が進む前に獣医師に相談しておくと重症化を防ぎやすくなります。
とくに子犬やシニア犬は体力の余裕が少なく、症状の進行スピードが早い傾向にあるため、成犬よりも早めの受診を意識してください。

少し様子を見てもよいケース

犬が1回だけ吐いたあとケロッとしている、食欲は少し落ちているが水は飲めているといった状態なら、半日〜1日ほど経過を見守っても問題ないことが多いです。
様子を見ている間は消化にやさしいフードを少量ずつ与え、激しい運動は避けて安静に過ごしましょう。

ただし、翌日になっても改善が見られないときや、嘔吐や下痢などほかの症状が加わった場合は念のため受診を検討してください。
犬の体は小さいぶん変化が早く進むため、こまめに様子を確認しておくことが大切です。

犬が元気ないときの動物病院での検査内容と費用の目安

犬が元気ないと感じて動物病院を受診した場合、獣医師は問診と身体検査のあとに必要な検査を組み立てていきます。
「どんな検査をするのかわからなくて不安」
という声は飼い主様からよく聞かれるため、代表的な検査の内容と費用感を事前に把握しておきましょう。
検査の種類を知っておくと、受診へのハードルがぐっと下がるはずです。

血液検査

血液検査はもっとも基本的かつ情報量の多い検査で、

  • 腎臓・肝臓の数値
  • 炎症マーカー
  • ホルモン値

などを幅広くチェックできます。

甲状腺機能低下症や慢性腎臓病など、血液検査で発見につながる疾患は数多くあります。
貧血の有無や白血球の増減も確認でき、感染症や免疫異常のスクリーニングとしても有用です。

費用は検査項目の数にもよりますが、一般的に5,000〜15,000円程度が目安になります。

画像検査(レントゲン・エコー)

血液検査だけでは臓器の形や内部の状態まではわからないため、犬が元気ないときは状況に応じて画像検査が組み合わされることもあります。
代表的なのがレントゲン検査とエコー(超音波)検査の2つで、それぞれ得意とする分野が異なるのが特徴です。

レントゲン検査は骨や関節の異常、胸部の状態を把握するのに向いており、全体像をパッと捉えたいときに役立ちます。

一方のエコー検査は、臓器の形態や腫瘍の有無をリアルタイムで観察できるのが強みです。
たとえば心臓病が疑われる場合、エコー検査で心臓の弁の動きや血流までくわしく確認できるので、僧帽弁閉鎖不全症などの早期発見にもつながります。

また、異物誤飲が疑われるケースでも、これらの画像検査で異物の位置を特定できることが少なくありません。

費用面では、画像検査が加わると合計で20,000〜30,000円ほどになるのが一般的な目安です。
さらに入院や点滴が必要になった場合は費用がかさむため、ある程度の出費を想定しておくと慌てずに対応できます。

その他の検査

血液検査や画像検査で原因を絞り込めない場合や、より精密な診断が必要なときは、追加の検査が行われることもあります。
たとえば心臓病がより強く疑われる場合は心電図検査、脳疾患の可能性があるときはMRI検査が選択肢に入ります。

尿検査や便検査もよく行われる検査で、尿検査では腎臓の機能や膀胱の状態、便検査では寄生虫や消化管の出血などをチェックできるのが特徴です。

このように検査の種類は幅広いため、費用の総額も症状によって変わってきます。
不安がある場合は受診前に電話でおおよその金額を確認しておくと安心です。
また、ペット保険に加入している方は補償対象になるかどうかもあわせてチェックしておきましょう。

犬が元気ないとき受診前に準備しておきたいこと

犬が元気ないとき、いざ動物病院に向かおうとすると、焦りから何を伝えればいいのか頭が真っ白になってしまうこともあるかもしれません。

獣医師が知りたい情報は、

  • 元気がない期間
  • 食事量や排泄の変化
  • 嘔吐や下痢の有無
  • 直近の環境変化(フードの切り替えや引っ越しなど)
  • 持病や服用中の薬

の5つです。
これらをまとめておくだけで、限られた診察時間を有効に使えます。

さらにおすすめなのが、愛犬の様子をスマホで動画撮影しておくことです。
動物病院に着くころには一時的に元気を取り戻していることも珍しくなく、自宅での映像は獣医師にとって非常に貴重な診断材料になります。

また、動物病院へ向かうまでの間は愛犬が静かに過ごせる環境を整えましょう。
体を強くさすったり無理に動かしたりせず、そばで見守りながら状態の変化を記録するのがポイントです。

体温が低いと感じたときはタオルやブランケットで体を包み、温めることも有効です。
不安なときはかかりつけ医に電話を入れ、適切な対処法を教えてもらいましょう。

病気を早期発見する健康診断のすすめ

ここまで紹介してきた病気の多くは、定期的な健康診断で症状が出る前に発見できる可能性があります。
「具合が悪くなってから病院に行く」のではなく、「何もないうちに検査を受けておく」ことは愛犬の命を守るために大切です。

7歳を超えたシニア犬は臓器の機能が低下しやすく、慢性腎臓病や腫瘍など加齢にともなう疾患のリスクが高まります。
とくに脾臓や肝臓にできる腫瘍は初期に目立った症状が出にくく、
「なんとなく元気がない」
という漠然とした変化だけが唯一のサインになることも少なくありません。
シニア犬は半年に1回のペースで血液検査や画像検査を受けておくと、見た目ではわからない体内の変化をいち早くキャッチできます。

また、若い犬でも年1回は健康診断を受けましょう。
「うちの子はまだ若いから大丈夫」
と油断していると、病気の初期サインを見逃してしまうおそれがあります。
年に1回でも健康なときのデータを蓄積しておけば、わずかな数値の変化にもいち早く気づくことが可能です。

病気の早期発見・早期治療は愛犬の寿命を延ばすだけでなく、治療費の負担軽減にもつながるメリットがあります。

まとめ

犬が元気ないと感じたとき、その背景にはストレスや疲れといった一時的なものから、内臓疾患・中毒など命に関わる病気まで幅広い原因が潜んでいる可能性があります。

大切なのは、震えや嘔吐など「元気がない」に加えてどんな症状が出ているかを冷静に観察し、緊急度を見極めることです。
ぐったりして起き上がれない、けいれんが止まらないといった危険サインがあれば迷わず動物病院へ向かいましょう。
迷ったときは電話で獣医師に相談するだけでも、適切な判断の助けになります。

そして何より、定期的な健康診断で病気の芽を早いうちに摘んでおくことがいちばんの予防策です。
愛犬のちょっとした変化に気づける感覚を日頃から磨きながら、健診のたびに
「何もなくてよかったね」
と笑い合える日々を大切にしていきましょう。

この記事の執筆
陶山雄一郎
陶山雄一郎
フリーランス獣医師
経歴・資格
2014年 麻布大学獣医学部獣医学科卒業

動物臨床医学会所属
動物臨床医学会獣医総合臨床認定医
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この記事を書いた人

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